孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




男の人はみんな下心があると思っていた。

何かしらの理由をつけて女の子に触りたいだけなんだって、そんなふうに。


でも、今。


家にまで連れられてしまった私は、不思議と嫌悪感も恐怖も感じていなかった。



「パーティーってなんのパーティー?」



軽く笑いながら、部屋へと入ってゆく海真さん。

つづくように真似をして靴を脱いだ。


なんのパーティーかは聞いた本人もとくに返事を気にしていなさそうだったから、私も答えなかった。



「お、お邪魔します…」



お部屋に行くまでの短い廊下にキッチンがあって、トイレやお風呂まで…。


タバコの匂いもしない…。

本人が吸っていれば部屋に充満しているはずが、一切だった。

それは彼自身が吸っているわけじゃないということ。


周りから付着した匂いが私にさっき、そう思わせていたんだ。



「………ピアノ…」


「うん。ピアノ」



今日で2回目。

お店で見たものよりもちろん小型になっているけれど、音量の調節もできるしっかりした88鍵盤の電子ピアノがひとつ。



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