孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
忘れたんじゃなく、思い出せないだけ。
だってあなたは言ってくれたから。
私のこと、ぜったい忘れない───って。
「…き…み………の………、なま……え……っ」
「私の名前は………のの。────水渡 乃々(みと のの)です」
「………おれ……の……、かぞ、く……?」
「……うん。家族だよ」
あなたの近くには、家族がもう2人います。
もっと言うと、天国にも3人います。
たくさんではないけれど、温かい人たちに囲まれて愛されて、あなたは笑っていました。
海真くんはピアノがすごく得意でした。
弾いている姿はいつも以上に格好よくて、あなたの演奏に心動かされた人たちが、この世界にはたくさんいます。
私も、そのひとりだよ。
三枚目を演じる性格で、ちょっと強引なときもあって。
泣いているお嬢様をいつもやさしく抱きしめてくれた王子様。
心に決めたらすぐに動く。
身体ひとつで大切な女の子を守ることができる強さがある、あなたはまっすぐな男の子。
その海真くんとまったく同じになる必要はない。
きみは君のままで、キミでいいの。