孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
そうだとしても、違ったとしても、なんだっていい。
きみが私に贈ってくれた言葉ひとつひとつ、今度は私が海真くんに贈るから。
泣いているきみを、私がやさしく何度も何度も抱きしめるよ。
孤独な王子様を、
やっと私が拐う─救う─番。
「…きみと………はなし、たい…」
「…うん」
「…ノノちゃん…と…、話したい……っ」
「……話そう。……っ、いっぱいだよ…?」
私が今いちばん伝えたい言葉は、これだけ。
「────……生きていてくれて、ありがとう。…海真くん………っ」
昨日のきみでも、
あの日々のきみでもない。
今日までのきみでも、私が知っているきみでも、知らなかったきみでもない。
ここにいるのは、今ここにいる水渡 海真くんだ。
愛していくよ。
それまでも、これからも。
いつかきみが、私が知っているものと違うようで同じ、そんな少年のような顔で笑える日まで─────。