孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「ここに…、」


「うん?」


「……ここに、私も住んじゃ……だめ、かな」


「……………」



食べ終わって、手持ちぶさた。

だからといって言っていいことと悪いことがある。


最後のひとくちを食べようとしていた彼の動きさえ、止まった。

そこで自分がバカを言っていると理解するんだから、私ってひどいね。


けれど、返ってきた言葉は予想外。



「ぜんぜんいーよ?」


「……え……?」


「いいんじゃない?あ、でもおれ学校とかバイトがあったりするけど……いっか、いっしょに行けば」



とくに制服は見当たらないから、学校と聞いて新鮮味のようなものを感じた。


あの小さなバーで働いている。
でも年齢は私と同じ17歳。

世の中、いろんな人がいるんだ。



「狭くてへーき?一応はバストイレ別だけど、独立洗面台なんかないよ。女の子ってたぶんぜったい必要じゃん。
あ、違うか。ののちゃんみたいなオジョーサマの場合はドレッサー的なやつ」



あなたはそんなふうに笑うんだって、そんな素敵な顔をしていたんだって。

暗闇すぎて私たちはよくお互いを見ていなかったんだ。


キラキラと瞳を輝かせて、どこか少年みたいだった。



< 40 / 335 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop