孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
夜の学校で
「ガッカリだわ。乃々はあたしのこと、嫌いなんでしょう」
家を抜け出してパーティーもボイコットした娘が帰宅したとき、お母さんが放った言葉はそれだけだった。
期待なんか最初からしていなかったし、それだけで済んだのだからマシなほう。
婚約者である財前さんにも謝罪をして、その夜は不思議と涙は出なかった。
『……ここに、私も住んじゃ……だめ、かな』
『ぜんぜんいーよ?いいんじゃない?あ、でもおれ学校とかバイトがあったりするけど……いっか、いっしょに行けば』
冗談のつもりではなかった。
でも、冗談にしなくちゃダメだった。
こうしたい、じゃあそうしましょう。
にはならない、私の人生では。
「…連絡先…、聞いておけばよかった……」
これもまた、心残り。
ただあの街に行って、あのお店に行けば必ず会える。
問題はお店の場所をよく覚えていないことだけ。
お店の名前も見ていなかった。
それくらい、すごく暗かった。