孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
夜の学校で




「ガッカリだわ。乃々はあたしのこと、嫌いなんでしょう」



家を抜け出してパーティーもボイコットした娘が帰宅したとき、お母さんが放った言葉はそれだけだった。


期待なんか最初からしていなかったし、それだけで済んだのだからマシなほう。

婚約者である財前さんにも謝罪をして、その夜は不思議と涙は出なかった。



『……ここに、私も住んじゃ……だめ、かな』


『ぜんぜんいーよ?いいんじゃない?あ、でもおれ学校とかバイトがあったりするけど……いっか、いっしょに行けば』



冗談のつもりではなかった。
でも、冗談にしなくちゃダメだった。


こうしたい、じゃあそうしましょう。

にはならない、私の人生では。



「…連絡先…、聞いておけばよかった……」



これもまた、心残り。


ただあの街に行って、あのお店に行けば必ず会える。

問題はお店の場所をよく覚えていないことだけ。


お店の名前も見ていなかった。
それくらい、すごく暗かった。



< 43 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop