孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「お母さんもいないことだし、もうそこまで形を作らなくてもいいと思う」
使用人が迎えに来てしまう前にかけた電話。
今日は迎えはいらないと、そこまで使用人をしなくていいと。
藤原さんは戸惑っているようだったが、どこか嬉しそうでもあった。
迎えに並んだ車のなか、たったひとり徒歩で帰ってゆく生徒は私だけ。
というのも、今日は寄りたい場所があったから。
「すごい…、こんなふうになってるんだ……」
初めて入った、コンビニエンスストア。
まるでお手軽で小さなマーケットみたいだ。
おにぎりやパンだけじゃなく、食べたことのないカップラーメンとやらもある。
かと思えばスイーツやお菓子。
日用品まで揃えられていて、こんなところだったんだと、感動だった。
「レジ袋はどうされますか?」
「ど、どうって…?」
「1枚3円ですが」
「えっ、お金取るんですか……?」
「……はい」
袋にもお金がかかるんだ…。
私が行くお店だったりは袋が付くのが当たり前なのに。
1枚くださいと、小さな声で言った。