孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
私はUターンして、もうひとつの場所へと向かった。
そこだけはなにがなんでもって、暗いなかでも覚えていたの。
「……お嬢ちゃん、どこの子?」
「えっ…」
「見ない顔だけど」
インターホンを押しても出ないようだから、玄関前で待っていることにした。
この前のお礼をしにきた───なんて理由をひとつだけ持って。
すると隣のドアから出てきたパーマがかった中年女性に声をかけられる。
「私はここに住んでいる方の……お、おともだち…で」
「へえ。またご立派な制服なことで」
「い、いえ…」
それだけ言って、上下スウェット姿のおばさんはサンダルを履いてどこかへ行った。
どうしよう……。
このまま待ってて迷惑にならないかな…?
それを考えられるのならコンビニエンスストアの時点で考えていた。