孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「とか言って。ごめんちょっと嘘」
「え…?」
「おれも…ここ数日は遠回りしてた」
遠回り……?
どうして?と、目を向けてみる。
「ののちゃん家のあたり、わざと歩いてみたりして」
それならそうと言ってくれればいいのに。
そうすれば私はお母さんの目を盗んで、すぐ家の外に出ていた。
………って、そうだ連絡先も知らないんだったね。
「今ここでずっと待ってた?」
「…うん。でもまた明日にしようかなって思ってたところ…だよ」
「よかったー。おれもいつもはバイト行ってるけど、今日はグッドタイミング」
学校帰りだろうか。
だとしてもあの日のような服装だ。
彼の仕事用兼、私服だと言っていた。
そして昼間だといっそう、目を奪われる。
「久しぶり。ののちゃん」
「ひ、久しぶり…」
改めて挨拶を交わして、ふわりと海真くんは瞳を細めた。