孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
孤独なお嬢様
「このあとどうする?あっ、そうだ新作ラテ!飲みいこーよ」
「いいね。なんかめちゃくちゃ美味しいらしいよー」
「マジで?映(ば)える?」
「映える映える。ちなみに店員さん、イケメンな大学生入ったっぽいし」
「最高じゃん!」
白のセダンから見る風景は、今日も変わらない。
変わらないというより、私の目が自然とそっちに引き寄せられてしまうんだ。
窓を少し開けただけで楽しそうな声が聞こえてくる。
赤信号。
もう少し長引いて、とも思うし、はやく青に変わってとも思う。
「ーーさん、ーーー、乃々(のの)さん」
どうやら呼ばれていたらしい。
後部座席に座る私へと、運転席からバックミラー越しに使用人は顔色を伺ってくる。
窓の外を歩く同世代の女の子たちから、私はスッと現実へと戻った。