孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




数日しか経っていないというのに、こんなにも長く感じたのは初めてだ。

本当は翌日に来たかったけれど、お母さんから反省しなさいとのことで外出禁止が命令されてしまって。


やっとアメリカへと戻っていって、今日だ。



「これからおれ、学校なんだ。だからちょうど腹減ってて。ありがと」


「え、今から…?」


「そー。…もうちょい時間あるから、とりあえずシャワー浴びたいし入ってよ」



私からの差し入れを嬉しそうに受け取りながら鍵を開けて、招かれる。

そうだこんな匂いだったと、トクンと心臓が跳ねた。


よかった…、会えた。
変わらず前みたいに話せた。


藤原さんには遅くなるとはとっくに言っていて、どう思ったかは分からないけれど。



「それ、ののちゃんの学校の制服?」


「っ、そ、そうだよ…」



お風呂から上がったことは、近くで聞こえた音とふわっと鼻に届いてきた香りに分かった。


しかしすぐに顔を逸らしてしまうと、察した海真くんが「あ、ごめん」と言ってすばやくシャツを着る。



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