孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「おれ制服とかないから、ちょっと羨ましい」
「そ、そうなんだ…ね」
濡れた髪。
汗を洗い流してきたからか、また一段と透明に見える肌。
少年っぽさもあるというのにやっぱり男の子で、どこかドキドキしてくる。
じっと見つめられると余計に恥ずかしい。
「前はどっちかというとオヒメサマ。今日はオジョーサマ」
「…海真くんは……王子様みたい」
「ははっ、おれ?おれなんかただの庶民ってとこじゃん。おれがいつも着てるような服も、中世ヨーロッパの庶民をイメージされてるらしいし」
王子様だったよ。
あんなにも絶望の淵に立っていた私を、力づくでも引き戻してしまったんだから。
今日はベスト姿なんだと、それさえ見入ってしまいそうになる。
「海真くん、見すぎだよ…」
「んー。だって、ののちゃんそんな顔してたんだなーって」
「え…、ぶ、ブサイク…?」
「ふはっ。どう思う?」