孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
その返答はいちばんやめてほしい。
悪いなら悪いって正直に言ってくれたほうが、こちらも吹っ切れることができそうだ。
「海真くんは…、格好いいんだね」
整った顔立ちもそうだけれど、一見すると取っ付きにくい感じもするのに、話してみると親しみやすさ満載。
スッと入った二重ラインは、笑った瞬間に優しさと甘さを発揮する。
ピアノを弾けてしまうギャップあり。
とくべつ格好つけなくても目を惹かれるものの、気楽だからという理由だけで三枚目を演じる性分───それが私が見た海真くんというひと。
「………っ、」
伸びてきた手が、私の髪の毛をすくった。
毛先を流すように指を通して、くるくる遊んだり、ちょんちょんと私の頬っぺたに付けてきたり。
「ののちゃんの髪、若干ウェーブかかってる。…生まれつき?」
「…う、うん。海真くんはストレートで羨ましい」
「意外とそうでもないよ。おれも質感は硬めだったりするし」
触ってみる?と言われたから、触ってみる。
ほんとうだ…。
イメージしていたより、1本1本にしっかり芯が通っている。