孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




ひとりで暮らしているって、すごいことだ。

毎日のご飯も自分でどうにかして、電気を使うにも水道を使うにもいちいちお金が発生しているらしい。


それをすべて海真くんは自分で払っているってことなのかな。



「よし、行こう」


「えっ」


「学校!」



満足だった。

スマートフォンに入った初めてのお友達の名前を眺めているだけで。


けれど、準備万端な彼は私の腕を引いて家を飛び出す。



「海真くんっ!私っ、この制服だよ……!それに私はその学校の生徒じゃないから…っ」


「おれんとこ、わりと自由だから!制服はコスプレって言えばヨユー!あっ、電車乗るけどだいじょーぶ?」


「乗ったことない…!」


「さっすがオジョーサマ!」



手を引かれることが嬉しかった。

知らない世界へ一緒に連れていってくれるみたいで、ワクワクした。



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