孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「マジかっ、よっしゃ今日はミト来た!
……って、なにその子!!彼女!?はっ!?」
「うそ!そんなの初めてじゃんっ」
「おいミトっ、詳しく教えろっつーの!」
夕方から始まる学校。
初めての学校に、初めての生徒たちがいる教室へと私は入った。
うしろの席に座っていれば大丈夫だということで、そうはしているけれど…。
「コスプレ!?おまえってそんな趣味あんのかよ!」
「まあね」
「うわー、ミトって女の子にそういうのさせるの好きなんだ?」
「まあね」
「ねえねえ、名前なんていうの?」
「まあね」
「……まあねちゃん?」
ちがいます、遠坂 乃々です。
海真くん、もうちょっと会話に興味を持とう。
今のところ「まあね」しか返していないというのに、すでに彼の周りは人が集っていた。
それにしても少し怖い……かも。
こういった人たちとはぜったい関わらないだろうなって、むしろ苦手としていた部類だ。
奇抜で派手な髪色にメイク、アクセサリー、それぞれの香水の匂い。