孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「ねえチホ、また染めた?まえも染めたばっかじゃなかった?」


「んー、あんま気に入らなくてさー。やっぱいつもの美容室に戻したの」


「へえ~。あたしは前のほうが好き」


「ちょっとー。そーいうこと言われるとマジ冷めるんですけどー」



すごいな……、なんか。

馬鹿にしているとかじゃなく、本当に住む世界が違うような気がした。


見渡すかぎり女の子たちは大人っぽくて、メイクも特別なとき以外は基本しない私は子供に感じてしまう。


それにみんな自分でメイクができるような子たちなんだろうな…。



「ののちゃん、そんな怖がることないって。着飾んないと強く見せられない連中ばっかだから」


「おいっ!それどういう意味だよミト!」


「だっている?そんな錘(おもり)みたいなネックレス。もし目の前でナイフ持った奴らにでも遭遇したら、おれだったら見栄なんか張んないで投げ捨ててまでも走るね」



まるで喧嘩を売っているかのような物言いのはずが、不思議と海真くんの周りは楽しいという意味合いで賑やかになるばかり。



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