孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




普段はこんな機会ないのだからと、私もおもいきって会話に混ざってみることにした。



「か、海真くんは髪、染めないの…?」


「あ、おれ?1回アッシュ系とか考えたけど、あれ手入れとかめちゃくちゃめんどいらしーね。髪も痛むっぽいしメリットないじゃん。おれは元ある身体を大事にするジェントルマンなの」


「……ふふっ」


「…ののちゃんもそのほうがいーよ」



クラスメイトたちは「なんでピアスはノーカウントなんだよ」と文句を垂れるなか、私はそんな海真くんがいいなって思う。

私はもちろん染める予定などなかったけれど、ずっと黒髪でいようと密かに誓った。



「なんだよてめえ。マジむかつくな」


「あ?おまえから吹っかけてきたんだろ」


「…死ねよ」



すると離れた席では、男の子ふたりが睨み合っていた。

とうとう片方が手を出す寸前なようで、しかし周りのクラスメイトたちはそこまで気にしていなさそう。



< 57 / 335 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop