孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
普段はこんな機会ないのだからと、私もおもいきって会話に混ざってみることにした。
「か、海真くんは髪、染めないの…?」
「あ、おれ?1回アッシュ系とか考えたけど、あれ手入れとかめちゃくちゃめんどいらしーね。髪も痛むっぽいしメリットないじゃん。おれは元ある身体を大事にするジェントルマンなの」
「……ふふっ」
「…ののちゃんもそのほうがいーよ」
クラスメイトたちは「なんでピアスはノーカウントなんだよ」と文句を垂れるなか、私はそんな海真くんがいいなって思う。
私はもちろん染める予定などなかったけれど、ずっと黒髪でいようと密かに誓った。
「なんだよてめえ。マジむかつくな」
「あ?おまえから吹っかけてきたんだろ」
「…死ねよ」
すると離れた席では、男の子ふたりが睨み合っていた。
とうとう片方が手を出す寸前なようで、しかし周りのクラスメイトたちはそこまで気にしていなさそう。