孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「来ちゃうかな…?」
「…どーだろ。勘が良ければ来る…かもだけど。あの先生たまにTシャツ裏返しで着てたり、けっこうアホだから」
やめて。
そんなこと言ったら笑っちゃうから。
もし笑い声でバレたら海真くんのせいだよ。
「ったく、だれだこんなとこに置きっぱにした奴は。用具の片付けはするってのが基本だっつーに…」
案の定、足音はこちらに向かってくる。
幸いなことにステージ裏は証明がないため、先生が懐中電灯さえ持っていなければやり過ごせる……が。
チカチカとちらつくライト。
これはやばいかもと、冷や汗が流れそうだった。
「っ……」
ガゴンッと。
すぐ隣にあるボールカゴが揺れた。
先生が手にしたバスケットボールが投げられたのだ。
私は、わたしは。
身体を隠されるように、ぎゅうっと海真くんに抱きしめられている。