孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「汗っ、かいてる、かもで…っ」


「…ん、」



吐息がかかって、たまにリップ音が弾ける。


首に、キス……、されてる……?


うるさいくらいに鳴り出す心臓の、そのなかにある苦しさは嫌じゃない。

ゾクゾクと込み上げてきて勝手に動いてしまう腰は……どうしたらいいの。



「ののちゃん」


「ひゃ…っ」


「…ののちゃん」



試しにやってみたけど、案外ハマってしまって抜け出せそうにない───、


今この瞬間に対する説明としては間違っていないような気がする。


やさしさと甘さの狭間で呼ばれる、名前が。

身じろぐたびに取られて繋がれる、手が。



「かいま、くん」



いいよ───なんて、言ってしまいたくなった。

好きでもない男性と親のためだけに結婚して奪われてしまうくらいなら、いっそそれ前に、今。



「みーーとーーかーーいーーまーーー?不純異性交遊はな、教師と法律の目だけは誤魔化せねえぞーーー」


「………あ。」



そのとき。

懐中電灯の光がスポットライト。



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