孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「だいじょーぶ?もう少しだから頑張って!」



意外にも簡単に撒けた。
夜の校舎内を手を引かれるまま、走る。

私の学校とは違う設備や、共学高校だからこその雰囲気。



「先生、まだ探してるかな…」


「しつこい先生だけど、さすがに諦めてくんないと困るね」



家庭科室に入ると、海真くんは暑かったのか着ていたシャツのボタンをひとつだけ外した。

つい私もワイシャツのボタンをひとつ外す。


………と、「なんで外すの?」と、かすれた声が聞いてきた。



「……真似っこ」


「真似っこ?」


「…うん」


「…そっか」



そばにあった椅子に座る。
すぐ隣の椅子に海真くんはやってくる。

向かい合うように目を合わせてきて、どこか私はうつむいてしまった。



「…さ、さっきの……こと、」


「…うん」


「海真くんは…、だれとでも、するの」


「しないよ」



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