孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
すぐに答えてくれたことが嬉しかった。
「誰とでもなんかしない。初めてした」と、続けられた言葉だって。
ガラッと変わった空気は、いつの間にか笑顔を見せ合っていた。
「ののちゃんの得意料理は?」
「得意料理……は、アヒージョとかアクアパッツァとか。オリーブオイルを使うものが得意かな」
「………それ、どこで修行してくんの」
「え、調理実習でやらない?私の学校はフレンチかイタリアンが多くて。あっ、でも少し前にはビーフストロガノフとかも作ったよ」
「ああもうレベル。格の違いってやつだ」
はははっと、心地いい笑い声。
おなじ温度感の会話ができなくてごめんねって、本当はいつも謝っている。
「じゃあ…、いつかおれにも作ってくれる?」
あまり料理をしているように見えなかった、アパートのキッチン。
大体は外で食べているらしく、家には寝に帰っているようなものだと本人も言っていたけれど、そう思うと少し心配にもなってくる。