孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「…うん。作ってあげるね」



いつになるだろう。
いつかって、いつなんだろう。

来年になると、たぶん無理だ。



「ねえ、ののちゃん。女の子っていつもリボンいちいち縛るの?」


「え…?あ…、これはちゃんと留め具があって、簡単に取り外しができるようになってるの」


「へえー。すご」



そっか、海真くんは私服だから制服が羨ましいって言ってたっけ…。


気になるのかなと思って、プチっと外して差し出したリボン。

少しだけ間を置いてから受け取ってくれた。



「なんか……えろい」


「へっ」


「自らリボン外してくれんだよ?それって男子高校生のロマンじゃん」


「いやっ、そういうつもりじゃなくて…!」



ステージ裏でのことを思い出す。

忘れていたわけではないけれど、わざわざ思い出すようなことを自分から率先的にしてしまったんだ。



「ふっ、わかってるけど」



そして余計に距離を詰められた。

居たたまれなくなって視線を逸らし逸らし乗り越えていると、なぜか迫ってくる影。



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