孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




将来はすでに決まっている。
私は私の道を自分で決めたことがない。

でもいちばん嫌いなのは、言いなりのようにしか生きることができない自分自身だ。



「藤原(ふじわら)さん、少しでいいからどこかに寄ってくれないかな」


「なにかご用事が?」


「…そういうわけじゃないけど、しばらく外の空気を吸っていたくて」



本当は、その新作ラテ。
私も飲んでみたかったりする。

学生に人気らしいカフェは、いつも車から見るだけだった。



「乃々さん、今日は恭子さんの大切な日ですよ。帰ったら準備をしなくては」


「……そう、だよね」



別にお城みたいなお家で執事やメイドをズラリと揃えているとか、そういうわけではない。

そもそも日本でそのレベルの大富豪は滅多にいないと思う。


ただ、この藤原さんだけはどちらかというと家政婦寄りの使用人だ。


昔から仕事一筋で家を空けてばかりなお母さんの代わりに、彼女が私のお世話をしてくれたと言っても過言ではなく。



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