孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「かいま、くん」
「付けてみたい」
「っ、」
私の首に巻かれたリボン。
試行錯誤している姿がどこか可愛くも見えて、私はいろんな気持ちでじっとしていた。
パチッと、小さくはまった音。
「よし、できた」
「…ありがとう」
「そしたら今度また外すんだよね、おれが」
「……えっ」
カチッと、また本当に外されてしまう。
こんなにも楽しくてドキドキする学校があるだなんて知らなかった。
お嬢様学校では味わえない時間だ。
他校の男の子と、初めてきた学校でふたりだけの時間。
「もう海真くん。また付けてくれる?」
「……もういっかい言って」
「え…?どうして…?」
「キュンってきたから」
その日は授業に戻ることはなく。
体育館から家庭科室、図書室に理科室。
海真くんの手に引かれるまま、夜の学校をお散歩した。