孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
拐われたお嬢様
「僕と結婚したら、乃々には別荘をプレゼントしたいと思っているんだ」
「…別荘、ですか」
「そうだよ。海がいいかな、山がいいかな?それぞれに1戸ずつっていうのもどうだい」
月に何回か、こうしてふたりだけの時間が設けられる。
世間ではこれをデートというらしいのだけれど、私からしてみれば断れない地獄の時間だ。
高級車を運転する婚約者は、今日も今日とてオーダーメイドのジャケットを着こなせないでいる。
あなたにはタンクトップがいちばん似合うよと、嫌味のように言えたならどんなにいいだろう。
「僕は別に前のパーティーでのことは怒っていないよ。ただ少々、お転婆もほどほどにねってところかな」
「……ごめんなさい」
「謝罪はもういいから、もっと楽しそうにしてくれないか。乃々のために今日はとびきりのフルコースを用意しているんだから」
財前さん、
あなたは笑うかもしれないけれど。
私が食べたいものはそんなものじゃない。