孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




《自販機でもう1コ当たったぜい。ラッキー》



お手洗いで開いたスマートフォン。
新着メッセージは2時間前。

車移動中だったりも開くことができなかったから、やっと訪れた至福のときだった。



《ののちゃんがいたら一緒に飲めたけど。残念ながらおれが独り占めー》



メッセージと一緒に送られていた写真は、缶ジュースがふたつ。


ジュースを持った手にも注目してしまって、ああ海真くんの手だ…って、せつなくなる。


無性に会いたくもなる。

電話をかけたら迷惑だよねと、今まで何度悩んでやめたことか。



「そういえば僕は乃々の学校でのことをあまり知らないな。お友達はどんな子がいるの?」


「…そこまで仲のいい友達は…いないです」


「そうなのかい?パーティーの日はああ言っていたから、家に遊びに行くほどの仲の友達だと思っていたよ」



そうだった。

彼が私をどうにか守るためについた嘘は、そんなものだった。


ぎくりと焦ったが、そこを掘り下げたくはない。



< 76 / 335 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop