孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
《自販機でもう1コ当たったぜい。ラッキー》
お手洗いで開いたスマートフォン。
新着メッセージは2時間前。
車移動中だったりも開くことができなかったから、やっと訪れた至福のときだった。
《ののちゃんがいたら一緒に飲めたけど。残念ながらおれが独り占めー》
メッセージと一緒に送られていた写真は、缶ジュースがふたつ。
ジュースを持った手にも注目してしまって、ああ海真くんの手だ…って、せつなくなる。
無性に会いたくもなる。
電話をかけたら迷惑だよねと、今まで何度悩んでやめたことか。
「そういえば僕は乃々の学校でのことをあまり知らないな。お友達はどんな子がいるの?」
「…そこまで仲のいい友達は…いないです」
「そうなのかい?パーティーの日はああ言っていたから、家に遊びに行くほどの仲の友達だと思っていたよ」
そうだった。
彼が私をどうにか守るためについた嘘は、そんなものだった。
ぎくりと焦ったが、そこを掘り下げたくはない。