孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「お母さんは…今回はどのくらい日本にいるの?」


「このパーティーが終わったらニューヨークで行われるコレクションの準備があるそうなので……そこまで滞在はしないと思います」


「……じゃあ、今日もそのために帰ってきたようなものだね」


「…乃々さん。恭子さんは乃々さんを育てるために世界中を飛び回っているんですよ」



また嘘ばっかり言うね、藤原さん。

確かにお金をかけられていることは自覚しているけれど、育ててもらった覚えはない。


世界的なファッションデザイナーをしている母は、複数の有名ブランドを持っており、フランスとアメリカを拠点に会社を経営している。


そんな母はイベント好きでもあった。

今日もまた一流ホテルを貸しきっては、ブランド立ち上げ15周年パーティーなどと称される経営自慢会だ。


招かれる人間たちも皆、業界の面々から始まって名のある経営者ばかり。


もちろん娘である私、遠坂 乃々(とおさか のの)は欠席など言語道断。



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