孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「あのパーティーで恥をかいたのは僕もなんだぞッッ!!それでも君のためを思って庇ってっ、どれだけしてやったと思っているんだ!!」
「………、」
「僕は君の旦那になる男だろう…!!ここまで君のためにしてやっているんだからっ、いいかげんキスくらいさせたらどうだ!!」
やめたかったなら、どうぞやめてくれて構わない。
だれも頼んでいない。
こっちからお願いしたいくらいだ。
お願いですからもう、私を捨ててください───と。
「キス……、くらいって…」
「ああそうだ!婚約者なんだからして当然じゃないかっ!!僕がそのために今までどれだけ……っ」
「……そのために?」
言ってしまったと、隠そうとしたってもう遅い。
下心しかない人だとは分かっていたし、なにかと私に触れてこようとする。
気持ちが悪かった、いつも。