孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「そのために、こういう場を設けているの?そのためだけに……私にお金をかけているって、言うんですか」
だったら誰でもいいじゃない。
私じゃなくたって、女なら誰だとしても。
でもあなたはお金しかないような男だから、それでしか女性に相手にされない。
ただそのなかでも、私はこの人のタイプに残念ながらいちばんはまってしまったんだ。
「そっ、そこを切り取るのは理不尽じゃないか。だが僕は乃々を離すつもりはないし、恭子さんだって僕の家との関係が切れたら悔やむだろう。……まあいいさ、どうせ来年には結婚は決まっているんだから。早くいつもの乃々に戻ってくれ」
その日は藤原さんにお迎えを頼んだ。
じつは財前さんは宿泊まで取っていたらしく、もちろん当日キャンセルに。
不幸中の幸いとでも言おうか。
私はただただ、苦しくてやるせなくて悔しくて、涙が止まらなかった。