孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「……たい…っ、死にたい死にたい……ッ、死にたい死にたい……!!死にたい……っ」



ごめんね、海真くん。

あんなにも助けてくれたというのに、また逆戻りだ。


本当はね、死にたいというより逃げたい、なの。


でも“死にたい”のほうが、ぜんぶを終わらせられる気がして気楽にもなるでしょう?


逃げるということは、追われるということ。
完全には終わりにできない。

その罪悪感とずっとずっと戦っていかなくちゃいけない。



『はい、海真です』


「………っ、……、」


『…ののちゃん?』


「………う……、っ…」


『………ののちゃん』



急にかけてしまってごめんね。

アルバイト中…?
邪魔して本当にごめんなさい。


間違えてかけちゃったの、でも声が聞けてよかった。

ジュースの写真ありがとう。
ひとりで飲んじゃったなんて贅沢だね。


────声を聞いただけで涙ばかりがあふれて、用意していた言い訳なんかひとつも言えなかった。



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