孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「ねえ!おれ前世はぜったい不審者!空き巣とかやってた確実に…!」
「ふふっ、もっといい意味の例えにしてよ海真くんっ」
「すっげえ宝を盗んじゃったよおれ!」
靴はまた私専用の忘れ物があると、海真くんにおぶられながら家から遠ざかってゆく。
どこかにこんなおとぎ話があるのかもしれない。
寂しくて苦しくて泣いていたお嬢様は、とある盗賊さんに拐われました。
心までをも拐われてしまったそのお嬢様は、それから盗賊さんと幸せに暮らしましたとさ───。
………私、あなたに出会えてすごく良かった。
「じつは今日、ののちゃんに頼みたいことあんだよね」
「頼みたいこと…?」
「そ」と言って、カランカランと隠れ家でもあるバーのドアを開けた海真くん。
「ただいま店長。うわ、お客さんまた増えた?」
「急に飛び出していったかと思えば……ミトおまえな、今日だけはと言ってたろ」
「ちがうちがう、サボったわけじゃないんだって。明らか人手が足りなかったからさ、助っ人を連れてきたんだよ」