孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「も、もう行った…?ちゃんと鍵まで閉めた…?」
「……あ、ののちゃんのうしろにもう1匹いるわ」
「っ!!やだぁぁ……っ!!」
両手を伸ばせば、すでに伸ばしてくれていた海真くんの腕にぽすんっ。
「ごめん、嘘」と、聞こえてから涙が出た。
「もういないから安心して」
「…ひどいよ、」
「だってなんか…オジョーサマだなって」
お嬢様って…。
虫が苦手なことにお嬢様とかは関係がないと思う。
やっと今になって、自分が海真くんの腕のなかにいることを理解し始めた。
「ののちゃん」
「っ…、…うん」
「…ののちゃん」
「……っ、うん」
ドキンドキンと、心臓がなにかを言っているみたい。
昼間は婚約者と会っていた。
そんな私が今は別の男の子のお家で、その男の子と抱きあっているだなんて。