孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「…海真くん……、わたし今日、帰りたくない…」
挙げ句、こんなことまで言っているんだ。
彼がなにを思ったかは分からない。
腕が離されないからって甘えられると勘違いしてるのかも、私が。
「め、迷惑だよね…、ごめ───」
「帰すつもりない」
ゆっくりと腕が離されたけれど顔を見合うことはできず、ちょうど昼間買い物に行ったばかりだと、私に飲み物を用意してくれようとしている。
帰すつもり、ない───、
ハッキリと言われた言葉に、私は胸の奥がうずいた。
「海真くん、あのジュース飲んじゃった…?」
「あのジュース?…あっ、もしかして昼間送ったやつ?自販機の!」
「うん。それ…あったら飲みたい」
「あるある。おれも取っておいてよかった」
自動販売機で飲み物を買ったことがない。
どんな味がするんだろうと、いつも気になっていた。