孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「ご飯は食べたんだっけ?」


「…うん。海真くんは?」


「おれも賄(まかな)い食べた」



会話が途切れてしまう前に、彼は部屋を見渡した。



「じゃあ……風呂か。たぶんいっぱい働いて汗かいてると思うし。おれいつもシャワーでさ、ああでもお客さんはオジョーサマだからね。待ってて、すぐ洗ってくる」


「あっ、私もシャワーでいいよ…!一応はお家で入ってるから…」


「…ん。わかった」



ルームウェアのまま家を飛び出したから、服は問題がない。

ないけれど、男の子のお家にお泊まりするだなんて初めてだ。


それも同い歳。


昼間あんなことをしてきた婚約者に黙ってまで、私は他の男の子のお家に泊まるんだ。



「マット硬かったりする?おれ硬めが好きなんだけど、女の子って柔らかいほうがいい…じゃん、たぶん」


「…へいき、だよ」



おれもシャワー浴びてくるから寝たかったら寝てていいよ、なんて言われて。

とりあえずはベッドの上に座らせてもらっていた。


そしたら海真くんが戻ってきて、現在の会話。



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