孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「…うん。いっしょに、寝よう」
「……そっち、少し詰められる?おれ枕ナシでいーから」
「…うん」
壁際に私を寄らせて、ベッドから落ちないようにしてくれたのだろうか。
それとも、単純にたまたま?
嬉しいのに嬉しくなくて、ドキドキするのに苦しいものでもあって。
ただそれは、財前さんなど相手にすらならないものだ。
そもそも土台からちがう。
「電気、消すよ」
「…うん。おやすみ」
「…おやすみ」
期待していたとか、していなかったとか。
それを考えることすら海真くんに対しては
正しくないような気がした。
17歳の高校2年生の男女が、おなじベッドで寝ている。
それを「なにもない」にしてしまえる人なの、海真くんは。
そういう掴めないところも魅力なのだ。