孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「…ごめん。寝れないか、これじゃ」
「えっ、やだ…」
「……………」
離さないでと、海真くんにすがる。
もう少しこうしていて欲しい。
もう少しだけでいいから。
そんなものがずっとつづけばいい。
まるで私からのそんな返事を待っていたかのように、彼もまた落ち着いた。
「…“のの”って、どんな漢字?メッセージアプリでもアルファベットだからずっと気になってた」
「……それ、説明できないの」
「え、なんで」
「乃の漢字の説明の仕方が分からなくて、もういっこの“の”は、各々とかの…“の”」
「あー…、なんとなく分かったかも」
一言一言が緊張して、睡魔なんかどこかへ飛んでいってしまう。
少しでも動かれるたびに離れちゃうんじゃないかって心配になって。
向き合いたいけどタイミングが見つからなくては戸惑って。