転生したら猫系男子に付き纏われてるんだが?!

#1

"健太郎ー!"

誰かの俺を呼ぶ声が聞こえる。

"健太郎ー!"

何処となく懐かしさを感じる騒がしさ。
そういえば、誰かに名前を呼ばれたのは久しぶりやな。

"健太郎ー!"

天国って意外とうるさいねんな…ゆっくりできると思ってんけど…今頃俺が出勤してへん会社も、世の中も、何もなかったように動いてるんやろな。

"健太郎ー!"

「さっきから誰やねん!こっちは死んどるねん!もうすぐ成仏するねん!浸らせんかい!」

思わず声に出してしまう。
6つ子アニメのお◯さんに出てくる十四◯みたいなアホそうなやつが目の前にいた。めちゃくちゃあほそうや。

『あ、やっと起きたー!死んでるんじゃないかって心配したよお』

話し方まで十四◯やないか。
ほんで髪派手すぎちゃう?ピンク頭や…
てかそもそも…

「俺死んでんねん。信号赤やのに渡ってしまってトラックに轢かれてん」

せや、俺は確かに死んだはず…ここは天国なのか?

『なにそれ妄想?ははっ変なの〜!ここは学校だよお?』

その言葉を聞いて俺は周りを見渡す。

「え…」

何処となく懐かしさを感じる騒がしさ。
戻りたくても戻れなかった景色がそこにはあった。

「J…JKや…」

ここは天国やない。
俺はまだ死んでなくて、夢でも見てるんか?

『お前さぁ。気色悪い目で女子見てんじゃねーよ。』

ボソッと耳元でピンク頭に囁かれる。
なんや、急に人格変わるやん。

「そういう意味で見てたんとちゃうわ!なあ、俺のことつねってくれへん?」

『わかったあ!』

ピンク頭から隅々までつねられたり齧られたりしてようやく俺は気づいた。

「…夢…ちゃうなぁ…てかお前やりすぎやねん…」

『ねーねー、健太郎。早く屋上でご飯食べようよお!』

返事するよりも先にピンク頭に引っ張られ、何もわからへんまま屋上へ向かった。

『ここで毎日俺ご飯食べてるんだ〜!気持ちいいでしょ?』

確かに、屋上で昼飯なんて数年ぶりだ。
空を見上げる。こんなに空は綺麗やったんやな。
ピンク頭に話を聞くと、どうやら俺は大阪から転校してきたばかりの高校2年生だった。

「いやいや…信じられへん…俺はあの日死んだんや…」

『それって転生したってことー?』

「転生?」

『うん、前世の記憶を持って次の世界にいくんだよ。アニメじゃあるあるだよお!あ、魚みっけ。食べていい?」

「そうか…俺は本当に高校生に転生したんや…」

『そうなんじゃなーい?ま、転生したからには楽しい毎日しようよ!魚食べていい?』

「そうだな…俺は楽しむことも忘れて過ごしてたからな…魚はあげへんぞ」

『なんで!!!俺は魚が大好きなんだ!!ちょうだい!』

「なんでやねん!俺の弁当魚がメインや!!」

さっきからこのピンク頭に翻弄されっぱなしの俺。
魚をめぐって大喧嘩…悪い気せんなぁ。

『うわぁ!!』

ぴょんぴょん跳ねて魚を狙いにきたピンク頭がバランスを崩す。

「あぶないっ」

俺がピンク頭を押し倒したような体勢になる。

「大丈夫か?」

目を丸くして驚いているピンク頭。
すぐその目は驚きから妖しい目に変わった。

『わ〜お!ん〜気に入った。お前は俺のおもちゃだ』

ニヤつきながら俺の頬を撫でながら言う。

「何言ってんねん」

ピンク頭を起こす。

「そや、名前なんて言うん?」

『猫山 猫 (ねこやま キャット)」

「な、なんやて?キャット?」

思わず聞き返してしまった。

『へへ〜!珍しいでしょ!可愛いよね〜この名前!猫って書いてキャットって読むんだよ〜!』

自分の昼飯のパンを頬張りながら話す猫キャット。

「じ、じゃあキャットって呼んでいいんか?」

『え、無理。ご主人様って呼んで!』

「なんでやねん」

『じゃあ飼い主様かな〜』

「いややわ。」

急にノラ猫のような鋭い目つきで俺をみてくる。

『今からお前は俺のおもちゃって言っただろ。俺の命令に背いてんじゃねーよ。』

「猫キャットのおもちゃちゃうわ。てか俺も名前で呼んでや」

時々ノラ猫のように豹変してんねんけど、こんなん上司の怒鳴り声より可愛いわ。

『おい下僕』

「誰がやねん」

『んじゃあ奴隷!』

「なんでや!普通に健太郎って呼んでや!」

ドンっとフェンスに押し付けられ、ガチャンと音がした。同時に俺の手にヒヤリと冷たい感触が伝わる。

「なんで手錠持ってんねん!どこから持ってきてん!」

『魚いただきまーす!!あ、せいぜい授業前には戻ってこいよお!』

俺の弁当を平らげて、猫のようにすばしっこい足取りで屋上から消えた。

「なんでこうなんねん!!!!!!」

虚しくも雲ひとつない快晴の空に俺の声が響いた。

「Oー!!!MY!!!!キャーーーーーット!!!」

転生しても普通の学校生活は送れんようや。
俺と猫キャットの普通じゃない日常が今始まる。




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