拾われたワンコは元教え子を溺愛する
枯れたお花
 ――守られるような女じゃないだろ。お前。

 そう言った彼の左頬にビンタをし「守ってくれなんて言ってない!」と言い放ち、私が今まで彼の為に買い与えた物を全てはぎ取った。

 彼はフリーターで自分より稼ぐ女とは結婚したくないとほざいていたが、大抵の人はお前より稼ぐわ――とも言えず、そうだねって笑って誤魔化していた。


 何かを理由にしなければ別れも出会いも出来ないような男と、三年間も一緒だったことに悔しくて悔しくて。
 それなりに好きだったから酔って泣いて愚痴って、私は枯れてしまった。


 数分前に――。

「恋愛よりも仕事が大事じゃない?」

 別れてからある程度経ったある日。

 遊ぶ約束を急遽変更し家で飲みながら親友と喋っていたらスッとスマホを見せられ、そこには婚姻届けを提出した記念に撮ったらしい写真があった。

「ドレスもあんたの店で選ぶからさ。元気だしな?」

「ありがとうございます。自分ではなく人の幸せを間近で見ながら死んでいこうと思う」

「自分の幸せも大事よ?」

 そう言って幸せそうにスマホを眺めてから持ってきたビールを開ける。

 元カレの部屋を徹底的に掃除したいから手伝ってと彼女にお願いし、普通に掃除していたんだけど通販の箱から未使用の服にバッグに香水が出るわ出るわ。

 どれもブランド物で身に覚えがないけど明細書に私のカードで買ったと書かれている。

 確かに同棲するうえで必要な物はこれで買ってとカードを渡したけど、これは酷すぎる。

 そして気づかなかった私もね。これだけ使われても気づきもしないとか。アホか。ホント。
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