拾われたワンコは元教え子を溺愛する
「いやァァァァ!!!!」

 帰り着く前に段ボール類を処分して、ついでに気まずいだろうからと同性である神崎を呼んでおいた。

「彼は仕事仲間の神崎隆志(かんざきたかし)。髪やメイクを担当している人。んで、こっちは色野颯斗先生。私が高二の時の教育実習生だよ」

「だよ。じゃないわよ! いくら知り合いだからってこんなボサボサでモジャモジャな怪しい男を簡単に連れ込んでんじゃねぇよ!」

 口調が混雑している神崎は仕事中は優しいお姉様のようで、プライベートや私に対しては完全に漢って感じの口調。
 切れ長の目で背もかなり高いから怖い印象を持たれないように口調を変えているって言ってたけど、漢神崎を目撃した人からはアタックされまくり、一時期自称彼女が八人も居たことがあった。

「いいか一条。お前は駄目な男に引っかかるタイプなんだから変なもん拾ってくんな」

「変なもんって。凄くいい人なんだからそんな言い方しなくても。神崎には先生の髪切ってもらおうと思ってたんだけど。あ、ちなみにこれ昔の先生」

 スマホに入っていた昔の先生を見せると彼は両目をかっぴらき、舌打ちをした。

 神崎の弱点というか、彼は元々綺麗なものを持っているくせに手入れを怠って駄目にしている人や、興味を持たない人を酷く嫌う。理由は色々あるんだけど、一番は自分にないものをタダで持っているのにも関わらず育てないかららしい。
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