拾われたワンコは元教え子を溺愛する
「おい一緒に風呂入んぞ」

「え? は? ……え゛っ?」

「一条。勝手にクリームとか使うけど構わないよな?」

「もちろん。あとで髪も切ってあげてね。マッシュ一択だけど」

 はいはい、と面倒くさそうに言った彼に元カレが使っていた部屋にある服と下着を自由に使ってと言った。もちろん先生にも。

「時間がかかりそうだから食事でもって言いたいけど、全く作れないから適当に美味しそうなご飯買ってくる」

「運転はすんなよ?」

「分かってる。じゃあ神崎。後任せたよ?」

 さっきと同じギリギリパジャマには見えない服装でもう一度外に出る。財布と携帯とエコバッグを持って。

 お酒が抜けていない以外にも私には運転のセンスがないのか、既に二度も単独事故を起こしていてお父さんから運転を禁じられてしまった。仕事は誰かしら運転ができる人が居るからお願いしているけど、こういう時は地味に不便だ。

「いってきます」

「おー。いってら」

 先生は神崎に任せれば大丈夫と思っていたけどこの時一つのことが頭から抜けていた。

「こっちが元カレが住んでた部屋だから好きな服……って、おいおいマジかよ」

「全て新品……ですね」

 部屋に置かれていたタグ付きの服と、大量のブランド物のバッグや財布。そして処分をどうしようか迷っているこれまた大量のゴムの存在を。

「やっぱ騙されてたか。えーっと色野でいいか? 好きな服と下着選んでてくれ。バスタオルとか用意するから」

「えっと、はい」

「あ。言っておくけどマジで俺も一緒に入るから。期待しててね。色野ちゃん」

 もちろんその場にいなかったから、先生がヤられるって覚悟を決めたことも知らなかった。
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