拾われたワンコは元教え子を溺愛する

side神崎

「んで? アンタなんで公園に寝てたんだ? 教育実習生として一条と出会ったなら教師になったんじゃねぇの?」

 髪洗って髭剃って体洗わせて少し高めの入浴剤を入れて、女とならともかく俺は今ホームレスだった男と風呂に入っている。
 髪をガシガシ洗ったり肌を力を入れて洗わないように見張る為と、コイツが本当にヤバイ奴じゃないか知る為だ。

 細マッチョとは言わないが体は引き締まっている、と言うよりも痩せている。満足な飯が食えなかったらしい。髭のついでに眉も整えてやったら何度も礼を言われた。

 素直に礼を言えるってのはポイントが高い。

「教員試験には受かったんですがそこで自分の目標が達成した感じがあって。丁度一条さん達とも連絡を控えていた時期でしたし、このまま違う道に進んでも自分らしくていいんじゃないかって思ったんです」

「――で?」

「で……、七年ほど親の脛をかじりながらフリーター生活を送っていました」

 大きめの浴槽に並んで入って色野に質問していく。半身浴だからのぼせはしないが、真っ裸の男がそこそこ広い浴槽に横で並びながら入っている姿はヤバいな。

 入浴剤の色が乳白色でよかった。マジで。
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