さよなら初恋観覧車
 観覧車に乗る。


 これがどういうことなのか、あたしと(はる)くん以外の誰も知らない。

 小さなゴンドラの中に入って空を飛ぶってことが、あたしたちにとってどういうことかをわかる人はこの世にいない。

 お父さんもお母さんも、知らない。学校の先生も、今まであたしと付き合った男たちも知らない。


 ゴンドラに乗り込んだ陽くんは、あたしに大きな手を差し伸べる。


 あたしはその手を取って、狭い箱の中に招き入れられる。



 陽くんは窓の外を見た。夜に片足突っ込んだ空の下、あたしは陽くんを見てる。
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