一番星にキス。
 家に帰って、落合さんに教えてもらったところを復習していると、スマホが鳴った。お気に入りのポップス。

「尊?」

『あ、いちご。……元気?』

「うん、元気だよ。どうしたの?」


 元気、と聞く尊の声にはあまり元気がなかった。


「なにかあったの?」

『……いや、何にも。ただ……、声聞きたくてさ』

「……尊?」

『いちご。……なんか、いって』



 らしくない。尊らしくない。どうしたんだろう。

 尊が弱ってる。



「私に話せないことなら、聞かないけど。私は尊の味方でいたいよ」

 沈黙があった。

「私は尊が好きだよ」

 また、沈黙。

「何があっても、応援するよ。……尊が一番星になれるように」



 そのために「別れる」って選択肢があることは伏せておく。

 ひょっとして、私の存在は邪魔なんじゃない? という言葉は、どうしても口に出せなかった。
 

「頑張ってなんて言わない。負けないでなんて言わない。……いつでも、帰ってきて」

『ありがと』

 尊が言った。

『やっぱり、俺のいちごだなぁ』

「何言ってるの。……いつだって私は尊の味方だって言ったでしょ」
 
 うん、と尊はうなずいた。
 
 うん。なんどもうなずいた。私の言葉にうなずく尊は、小さい子供みたいだった。
 
 アイドルの世界は、わからない。
 
 わからないなりに、力になってあげたい。

 



 そんな矢先だった。


 落合さんから、メールが入ったのは。



 『熱愛報道、出ましたね』
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