一番星にキス。
第四章
「熱愛報道って何!?」
私は即座に落合さんに電話した。
夜の十時を過ぎていたけれど、そんなことはどうでもよかった。
もっと言えば、自分で調べても良かったのだけれど、そんな余裕はなかった。
心臓がばくばくしている。
ばれた?
私と尊のことがみんなにばれた?
『西園寺翔太の熱愛報道です』
「……だれだっけ?」
私は拍子抜けしてしまった。
違った。
『イメージカラー赤の子です』
私はそれでようやく、サイショーと呼ばれていたエースのアイドルのことを思い出す。
オフショットでも、よく尊に絡んでいた。あの子が。
私は即座にSNSを覗いた。そしてすぐに閉じた。
地獄だった。
呪いの言葉が飛び交っていた。
見なきゃ良かった。
「女と付き合ってるなら推さなきゃ良かった」
『SNSは見ないことをおすすめします。荒れてるので。ライブ、どうなるかわかりませんが、その辺は私に任せてください』
「お、落合さん……」
普段からは考えられない真剣そのものの声音に、私はどうしていいかわからなかった。
感情がぐちゃぐちゃだった。
「ど、ど、どうしよう」
尊と私も。いつかこうなっちゃうんだろうか……?
『野宮さんが慌てる必要はありません。二人は別れてますから』
「ち、ちがくて、ちがくて、あの……」
『大丈夫です、別れている以上、野宮さんにも、小鳥遊尊にも、害は及びませんから』
「あ……」
落合さん。別れてないんだよ、私たち。
まだ、好きなの。
大好きなの。
諦められないの。
尊の夢も、私の恋も、諦めたくないの。
「っわ、わたし、……ライブ、行かない方がいい、かも、しれない」
『野宮さん……』
「付き合ってたカノジョが、元彼のライブなんか、行かない方がいいかもしれない」
落合さんは黙ってしまった。私は心の底から頭を下げた。
「ごめんなさい。誘ってくれたのに。……だめかもしれない、私」
『野宮さん、あまり気にしないでください。こういうことは、よくあることで……』
「でも、私は尊の元カノ、だから……」
違う。そうじゃない。私たちはまだ、ひみつで付き合ってる。
違うけど、止まらなかった。
「尊の邪魔になりたくない」
これだけは、本音だった。
尊が弱ってたように思えたのは、このせいだったんだ。仲間の熱愛報道がされたから。
「邪魔にならないように、今回は遠慮しておきたいの」
『……』
「ごめんなさい。ごめん、楽しみにしてたけど、無理なの」
『わかりました。……今度は、一緒に行きましょう。心の整理がついたらでかまいません』
「落合さん……ありがとう」