糖度98%楽観的恋愛
入浴後は、滝沢先生が脱衣所に置いてくれていた服を借りた。
ドライヤーで髪を乾かしてリビングへ戻り、ソファに横になる。
体が温まったせいか、異様な眠気が襲ってきた。
「もう動きたくない……。滝沢先生、ちょっとだけここで寝てから帰ってもいいですか?」
キッチンで紅茶を入れている滝沢先生に問いかける。
我ながら、他人の家だというのに自分勝手に振る舞い過ぎだろうかと心配になったが、滝沢先生は私のその態度が面白かったのか何故かふっと笑い、飲み物を持って私の寝転がっているソファの端に腰をかけた。
「いいけど、親心配しねぇの? もう八時だぞ」
「親、家にはほとんど帰ってこないんで。今頃好きな男の家にいると思います」
「……ふーん」
私が男好きと言われるのは、母親の遺伝だと思う。
うちは一人親家庭で、いるのはお母さんだけだけど、そのお母さんも私が中学生になる頃にはあまり家には帰ってこなくなった。
計画的に使うのよ、と定期的にお金だけ置いてまた出ていく。
私が一人で何もできないほど幼い頃にはちゃんと面倒を見てくれたし、お金を置いていってくれるだけ良い親だ。
世の中にはもっと酷い親が沢山いる。だから別に自分のことを不幸だと思ったことはない。
「送るのめんどくせぇし、もう泊まってけば?」
「別に送らなくていいですよ。電車で帰ればすぐそこなんで」
「それで何かあったら俺の責任だろ。ガキは大人しく言うこと聞けよ」
「……はい」
もう眠気がピークになっていて滝沢先生と言い争う気も起きず、適当に返事する。
明日は晴れていたらいいな、などとぼんやり考えているうちに、眠ってしまっていた。