糖度98%楽観的恋愛
目を覚ますと早朝だった。
ソファの前にあるのとは別のテーブルで、滝沢先生が新聞を読んでいる。
私はまだ眠い目を擦りながら立ち上がる。
乾燥機の上に私の制服がかけられていて、わざわざ洗濯してくれたのかと少し感謝した。
――が、その横にかけられている自身の下着が目に入り、一気に感謝の気持ちが引っ込んだ。
「…………下着まで洗ってくれたんですか」
「おー」
先生はこちらを見ず、興味なさげに答える。
そして、恨みの視線を向けている私に遅れて気付いたのか、新聞から顔を上げて聞いてきた。
「洗濯機回しちゃいけねーやつだった?一応タグ見たんだけどいけそうだったから回しちまったわ」
「……っ!!」
タグを見るな、タグを!
羞恥でわなわな震える私を見てようやく私の心情を察したのか、滝沢先生がにやりと笑う。
「ああ、そーいうこと?お前、羞恥心とかあんだ。保健室ででけぇ声で喘ぐくらいだからそういう感情ないと思ってた」
「な、……何で……」
確かに保健室で同級生とヤる時はあるが、誰もいないタイミングを見計らっているし鍵もかけている。
なのに何故。
「何でって、俺一応先生だし。保健室の鍵持ってんだよ」
「……聞いてたなら止めてくださいよ」
「嫌なら他所でしろよ。何度も言ってるだろ」
「…………」
ごもっともなので言い返せない。
私は乾いた制服を乱暴にハンガーから剥ぎ取り、鞄を持って玄関へ向かう。
「もう帰んの?」
「泊めてくれてありがとうございました」
「お礼は体でいーよ」
「そんな冗談……」
生徒に対して言っちゃダメですよ、と言おうとして振り返ったその時、滝沢先生の唇が私の唇に当たった。
否、“当たった”のではなく、“わざと当てられた”。
事故チューなんて少女漫画みたいなこと、現実では起こりっこない。
「――“また”な、中谷」
不敵に口角を上げた滝沢先生のその顔が、やけに色っぽく見えた。