糖度98%楽観的恋愛
――私は“ちゃんとした大人”っていうのを知らない。
男はいくつになっても年下の女が好きなものなんだと思ってる。
なんやかんや言って、相手が中学生や高校生のような未成年でも手を出す人は手を出す。
実際、お母さんの昔の恋人だってお母さんを放って私に手を出してきた。
滝沢先生もきっと、実は隠れて生徒に手を出しているに違いない。
私に戯れでキスするくらいなんだし、他の子にしてたっておかしくはないだろう。
そんなことを考えながら理科実験室に着き、持ってきたコンビニ弁当の蓋を開けた。
ぼっち飯である。
大抵の生徒は教室か食堂でご飯を食べているためここには来ない。さっさと食べてしまおうと箸を割ったその時、にゅっと覗き込まれた。
「昨日滝沢先生と帰ってたっしょ」
びっくりして目を見開いてしまった。
同級生の織田くんだ。
いつの間にそこに。
気配がなかった。
「あは、中谷、今ちょっと驚いた?」
「……うん。急に出てくるから」
「顔に出ねーけど、中谷にも感情あるんだなぁ」
「何だと思ってるの、私のこと」
「うーん、ロボット?」
「ロボット……」
「いや、いい意味でね?クラスでも話題だぜ、何考えてんのか分かんないミステリアス美人だって」
織田くんは良い人だからいいところだけ切り取って伝えてくれているが、私への噂がそのような褒め言葉ばかりでないことは知っている。
一部ではビッチだの男好きだの人の彼氏取った極悪非道人だのと散々な言われようである。
「なぁ、美玖って呼んでいい?」