糖度98%楽観的恋愛
滝沢先生はようやく掴んでいた私の手を解放した。
「中谷、お前、傘持ってないだろ」
「……何でですか?」
「眠たいのに帰らねぇってことは、昨日みたいに雨止むの待ってんのかなって」
「そうですけど……」
「は、分かりやす」
おかしげな声を出した滝沢先生が、「送ってやる」と歩き始めた。
滝沢先生は学校まで車で来ているのだろう。
乗せていってもらえるなら、有り難くはあるが。
「……変なことしないですよね?」
この男と密室で二人きりになるのは危ない気がする。
「何想像してんの。やーらし」
「あなたが何回もキスしたりするからなんですが……」
滝沢先生が何もしなければこちらだってもっと信用した。
けれど既に手を出されているのだから、多少は警戒して当然だ。
滝沢先生のせいだ、という意味を込めて軽く睨むが、滝沢先生には全く効いていない。
「これ以上のことはしねぇよ。俺、ガキに興味ねぇもん。キスは中谷の唇が柔らかそうだったからしただけ」
「……最低」
「つーか、今日雨予報だったのに、また傘持ってきてねぇわけ? お前めんどくさがりだろ。俺と一緒」
「できるだけ手ぶらで学校来たいんです」
「勉学に励むべき高校生の発言とは思えねぇな」
くっくっと肩を揺らしながら笑った滝沢先生は、階段を下りて職員駐車場へ向かっていく。
少し躊躇いはあったが、少しでも身体触ってきたら校長に言いつけてやろうという気持ちでその後ろを付いていった。