糖度98%楽観的恋愛
車の窓を叩きつける雨の勢いは昨日よりも穏やかだった。
駐車場から車を出した滝沢先生の横顔を盗み見る。やはり、顔だけはモテるのも納得のイケメンだ。
滝沢先生は音楽をかけないタイプのようで、車内は雨音が聞こえるばかりで静かだった。
しばらく走行した後、私はふと嫌なことに気付いて眉間に皺を寄せる。
「……あの、こっち私の家の方向じゃないんですけど」
というかこの男、私の家どっちかも聞いてこなかった。
「私、連れ去られそうになってます? 誘拐ですか?」
もし本当に拐われたら、1週間後、いや、2週間後の新聞に載るかもしれない。
友達いないし、家に人はいないし、ただでさえ授業を休みがちな私が学校に来なくなったところで誰も不思議には思わないから間が開くだろう。
「お前どうせ親帰ってこねぇんだろ。飯喰うぞ飯」
しかし、運転中の滝沢先生から次に投げかけられた言葉は、私が予想していた嫌な展開を否定するものだった。
「飯……」
「何食いてぇ?」
「……何でもいいんですか?」
「おー。この付近にある店ならどこでも」
「じゃあ、ハンバーガー」
私の要求に、何がおかしいのか滝沢先生がゆるりと口角を上げた。
「中谷ってハンバーガー食うのな。ジャンクフード食う顔してねぇのに」
「どういう意味ですかそれ」
言い返しているうちに、滝沢先生が信号を曲がる。
そっちは誰もが知る有名なハンバーガーチェーン店がある方向だった。