糖度98%楽観的恋愛
「いらっしゃーせー」とやる気なさげなバイト店員の挨拶が店内に響く。
雨の日だからか店は比較的空いていて、少し待つだけですぐに2人分のハンバーガーセットを受け取ることができた。
隅っこの二人席に座り、すぐにハンバーガーの袋を開けて齧りついた私を見て、滝沢先生はまたおかしそうに笑った。
笑うところじゃないだろっていうところで頻繁に笑う彼は、実は笑い上戸なのかもしれない。
しばらく互いに無言でハンバーガーを食べ進める。
こういう時にコミュニケーション能力のある生徒なら大人相手でもいい感じの話題を振れるのだろうが、私の中にそのような話のネタはない。
黙ってオレンジジュースを飲んでいると、突然滝沢先生の方からデリカシーのない発言が飛んできた。
「中谷って、男が好きなの?」
「……は?」
「いや、お前のクラスの奴がお前の悪口言ってたから。“あの男好き、授業サボってるくせに成績よくてウザい”だって」
「……悪口の告げ口する女子ですかあなた」
噂の良い部分だけを伝えてくる織田くんとは違って、滝沢先生はいらないことまで伝えてくる。
普通それ本人に言うか? って思った。
私はポテトに手を伸ばして掴みながら本音を答える。
「むしろ嫌いですよ。男は」
「ふーん」
「男って一括りにして全員蔑むのが差別だってことは分かってるんですけど、差別をしちゃいたくなるくらいには嫌な男ばっかり見てきました。それに男は、」
「お前から母親を奪うって?」
「…………」
食べる手を止めて滝沢先生を凝視してしまった。