糖度98%楽観的恋愛
「……そんなこと思ってません」
返事が一拍遅れてしまった。
滝沢先生は、否定されたにも拘らず「ふーん」とこれまた興味なさげにハンバーガーを食べている。
その口元が艶っぽくなっていて何だか妙な色気を感じ、私は思わずそこからすっと目をそらした。
「つーか何で嫌いなのに触らせてんの?」
「……嫌いだから、無様なところが見たいんです」
普段ならこんなこと言わない。自分の汚い本心なんて吐露しない。
「男が私の上で腰振ってる時、もう射精のことしか考えられないって顔で猿みたいに動いてるのがダサくて滑稽で、ああこの人たちは私より下等な生物だって思って安心するんです」
でも、それをこの男の前でなら露わにしていいやと思えたのは、滝沢先生はきっと私と同じくらい性格悪いだろうっていう見込みがあるから。
勝手に一方的に、同族だって思ってるからだ。
ぶはっと滝沢先生が噴き出した。
俯いてくっくっくっくっと肩を震わせて笑われた。
そんな滝沢先生を見てだんだん自分の発言が恥ずかしくなってきた私は、小さな声で「忘れてください」とお願いした。
「や、別にいいんじゃねぇ? 何も恥ずかしいこと言ってねぇよ」
「じゃあ何でそんなに笑ってるんですか」
「いつもそんなこと考えながら男に抱かれてんだと思って。お前と保健室でヤってる男たちが“滑稽”で笑えただけ」
わざとらしく私の使った言葉と同じ言い方をする滝沢先生は、何故か楽しそうだった。
それを見てほっとした。
やっぱりこの人は、私と同じくらい性格が悪い。